中小企業

【令和元年度補正予算】2020年に利用が可能な中小企業支援施策9,135億円

補正予算

 

るるやま
るるやま
財務省から全体で、4兆3,000億円の補正予算案が発表されて驚いたよ。そのうち、中小企業支援に関係する経済産業省関係が、9,135億円だよ。

 

本記事の内容

この記事を読んでいただくと、令和元年度の補正予算のポイントが理解できます。
・国の予算の概要について、理解ができます。
・国が実施する令和元年の補正予算のうち、経済産業省の中小企業支援策について理解できます。
・中小企業を顧客に持つビジネスを行う経営者やサラリーマンが、営業ツールとして情報提供できます。

国で編成される予算の種類について

国の予算は、その活動に必要な収入や支出を政府がまとめたもので、国会の審議と承認を受けます。予算の種類は、「本予算」「補正予算」「暫定予算」の3種類があり、今回編成されたものが、補正予算です。

本予算:1つの事業年度(4月1日~翌年3月31日)の財政計画に基づいて算出された1年間の予算です。1月に召集される通常国会の前半で政府の予算案が国会へ提出され、国会内での審議を経て成立します。毎回3月末日までに成立するよう定められています。

補正予算:本予算成立後の環境の変化や事情の変更によって、当初予算に過不足を発生した場合、またはその内容を変更する必要性が生じた場合に、追加で予算案を策定したものです。本予算と同様に、国会の承認を受けて成立します。

暫定予算:衆議院解散や本予算が年度開始前(3月末)までに成立しない場合などに、本予算が成立するまでの暫定措置として編成される予算のことです。暫定予算の内容は、応急措置的な性格から、国政運営上不可欠なものに限定されるのが原則です。本予算と同様、国会の承認を受けて成立します。

例えば、日本全体の予算は、下記グラフの通り、令和元年度一般会計で101.5兆円ですが、税収等では歳出全体の約2/3しか賄えておらず、 残りの約1/3は 借金(公債金)に依存しています。公債の構成比が海外と比較しても非常に高く、GDP比率で見ると世界1位の約2倍で、2位のイタリアの120%強と大きく差が拡大しています。産業振興により中小企業が日本の経済や雇用を牽引していくために、中小企業支援の予算も拡大をしていると言えます。

(図1)一般会計歳出内訳:社会保障費の構成比が最も高く、次いで国債費(国の借金の元本と利子の返済)が多い。
2019年一般会計歳出内訳

(図2)一般会計歳入内訳:歳入は公債発行で1/3を、所得税や消費税等の税収で2/3と借金の構成比が高い。
2019年予算歳入

(図3)年度別歳入と歳出:歳出が一貫して伸びているが、歳入はバブル崩壊後伸び悩み。
歳年度別入と歳出経緯

(図1〜3の出典:財務省「財政を考える」)

令和元年度補正予算のポイント

日本の中小企業の経営環境は、大きな変革期にあります。グローバル化ICT技術の進展人口減少による人手不足等、この大きな環境変化に対応していく必要があり、中小企業の重点経営課題としては、「生産性の向上」「事業承継の促進」「海外展開の促進」の3点だと言えます。経済産業省の補正予算は、まさに、この3点の課題を解決するための、施策として組まれた予算編成になっています。

ちなみに、利用可能な中小企業の定義は、下記の通りです。

中小企業の定義

業種定義
製造業・その他(ソフトウェアなど)資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人
卸売業資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人
小売業資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人
サービス業資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

中小規模企業の定義 /]

小規模企業の定義

業種分類定義
製造業・その他従業員20人以下
商業・サービス業(商業は卸売業・小売業)従業員 5人以下

小規模企業の定義 /]

生産性の向上施策について=3,600億円規模

大企業も中小企業も、生産性(生産性=産出(output)/投入(imput))のうち特に労働生産性を高める必要があります。日本の労働生産性は、OECD(経済協力開発機構)加盟国36カ国中21位と非常に低く、大企業と中小企業の格差は拡大している現状です。

経済産業省と中小企業庁は、「中小企業生産性革命推進事業」として、過去も実施していた下記3つの補助金の申請時期や申請基準を見直して、その運用を独立行政法人である中小企業基盤整備機構機構に委託することにしています。

1.変更のポイント

(1)申請時期を年2回から通年に変更。複数の締め切りを設定して審査・採択を行う。
(2)補助金申請システム(Jグランツ)による申請(公募から事業完了後の手続きまで)を行う。
(3)過去3年間の採択事業者は、審査にて減点し、新規申請者を優遇する。

補助金申請システムの「Jグランツ」は、2020年の補助金申請からスタートする新たなシステムで、いつでもどこでも「電子申請」が可能になるものです。「GビズID」という申請者固有のIDを取得する必要があります。このIDは、法人共通の認証基盤として、今後普及促進を図っていく予定のようです。法人情報が保存されているので、申請のたびに、企業情報を入力する必要がなくなります。

2.3つの補助金の概要

(1)ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業(ものづくり補助金)
補助額:最低100万円~最大1,000万円、補助率:中小企業1/2 小規模企業2/3
中小企業等が行う、革新的なサービス開発・試作品開発・生産プロセス の改善に必要な設備投資等を支援します。
(2)小規模事業者持続的発展支援事業(持続化補助金)
補助額:~最大50万円、補助率:2/3
小規模事業者が経営計画を作成して取り組む販路開拓の取組等を支援します。
(3)サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金)
補助額:最低30万~最大450万円、補助率1/2
中小企業等が行う、バックオフィス業務の効率化や新たな顧客獲得等の 付加価値向上に資するITツールの導入を支援します。
申請書に記載する事業計画の期間において、①「給与支給総額が年率平均1.5%以上向上」、「事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上」を満たすこと等を申請要件とします。(持続化補助金及びIT導入補助金の一部事業者は加点要件)要件が未達の事業者は、①天災など事業者の責めに負わない理由がある場合②付加価値額が向上せず賃上げが困難な場合を除き、補助金額の一部返還を求めます。
るるやま
るるやま
詳細な応募要領が出ないと分からないけど、申請書に記載した事業で、付加価値額が向上しているのに、賃金を上げていない場合は、一部返還義務が発生するという意味だね。安倍首相も7年連続で経済界に賃上げ要請をしているから、投資をして利益が上がったら賃金にも反映することを政策として求めているんだね。

事業承継支援の強化について

 

1.事業承継・世代交代集中支援事業=64億円

10年間という事業承継の集中支援期間を設定し、各都道府県に構築されたネットワークを活用して、支援を行います。

(1)経営者保証解除に向けた専門家による支援
経営者保証コーディネーターが「経営者保証に関するガイドライン」の要件充足状況 を確認し、必要に応じて専門家を派遣し金融機関との目線合わせを支援します。

(2)プッシュ型事業承継支援高度化事業
事業承継診断で堀り起こされた事業承継ニーズに対して、各県の承継コーディネータやブロックコーディネータが、事業承継計画策定や専門家派遣等を実施し、事業承継を後押します。さらに、モデル事業として、1プロフェッショナル人材拠点などを活用し ながら、後継者がその右腕人材を活用しやすくなる取組や、2サプライチェーンにおけ る事業承継を効率的に進めるための取組などを重点的に支援します。

(3)事業承継補助金
M&A等を通じた事業承継を契機に、経営革新等に挑戦する中小企業に対し、設 備投資・販路拡大等に必要な経費を支援します。また、新規事業への参入を行う場 合などには重点的に支援を行い、ベンチャー型事業承継・第二創業を後押しします。さらに、経営資源を譲り渡した事業者の廃業費用も補助します。

事業承継補助金

(4)承継トライアル実証事業
後継者不在の中小企業が、後継者選定後に行う教育について、有効な内容や型を明らかにし標準化を進めることで、円滑な第三者承継の実現を後押しします。

海外展開企業の事業円滑化について

2019年から2020年にかけて、日・EU経済連携協定や日米貿易協定などの貿易協定が発効され、関税撤廃やデジタル貿易の進展など、欧米を中心に貿易が活性化される可能性が高いです。国は、JETRO(日本貿易振興機構)を委託先として、海外展開に関する支援を強化する予定です。

中堅・中小企業の海外展開等を通じた 地域活性化支援事業=29億円

(1)日米貿易協定・日EU・EPA・TPP11締約国等への海外展開支援
①専門家によるサポート
・適正支援メニューの紹介や取次ぎ
・計画策定から商談助言までの一貫支援
・米国、日EU・EPA、TPP11締約国等の専門家による海外展開支援の充実
②中堅・中小企業へのTPP等の普及・啓発
・E-learningの提供や、パンフレット・解説書等の作成・配布、専門家等を講師とした 業種別のものを含むセミナー等の開催等を実施
③中堅・中小企業の海外展開支援の効率化事業
・企業の商品情報やバイヤーの調達情報を一元管理するデータベースを構築 • 成約ポテンシャルの高いバイヤー・セラーを選定するためのAI実証
④英国のEU離脱に向けた対欧州ビジネス支援事業
英国のEU離脱に関する事業者向けセミナー・個別相談等を実施

(2)地域産品等の海外需要開拓支援
①越境ECジャパンモール事業
・海外の主要なECサイトに特設サイト「ジャパンモール」を設置することにより、地域の 中小企業の商品の販路開拓を支援
・実店舗でプロモーションした後、ECサイトで販売する等のクロスマーケティング手法を実施
②地域産品の海外におけるプロモーション
新聞・雑誌・テレビ等での広告、SNS・WEBサイト等デジタルでの広告、キャンペーン イベント等、プロモーション活動を支援
③外国企業と連携したオープンイノベーション支援
国内、地方の中小企業などと外国スタートアップ企業とのマッチングや、外国企業の 日本進出を支援するために国内大学へのオープンイノベーション拠点や自治体への サポートセンターの設置・運営、外国企業に対するテンポラリー・オフィスの提供、首長 によるトップセールス等を行うイベントの開催を実施

本日のまとめ

中小企業の数は、357.8万者で日本全体の企業数に占める割合は、99.7%と非常に高いです。今日、記事に記載した支援策は、中小企業支援策のほんの一部に過ぎません。

るるやま
るるやま
是非、ご自身のお客様に中小企業さんがいたら、まずは、①市役所や区役所の産業振興窓口か、都道府県の中小企業支援センターを教えてあげてください!!

今日も、記事をお読みいただき、ありがとうございました!
るるやま @ruruyamasan でした。